●国会終われば、与野党国対委員長は恒例の海外視察●
臨時国会が8月6日に閉会し、焦点だった年金制度改革関連法廃止法案は与党の反対であっさり廃案となった。「廃止が民意」と法案の徹底審議を求めた民主党は振り上げた拳の降ろしどころが見つからず、さぞ困っているだろうと思ったら、国会の舞台回しを指揮する現場責任者の国対委員長は、自民、公明両党の国対委員長らとともに22日から10日間の日程でイタリアとトルコへ海外視察に出かけるという。なんのことはない、表では会期幅をめぐってつばぜり合いを演じておきながら、裏では「お手々つないで」旅行を楽しむのだ。
しかも、この一行の視察目的は「憲法改正手続き及び政治経済実情調査」。両国で憲法改正の動きでもあるのかと衆院事務局に尋ねると、「訪問国は国対委員長同士の話し合いで決まった。こちらでは、イタリアは以前からEU(欧州連合)に入っていて、トルコは最近加盟したということぐらいしか知らない」(国際部総務課)との頼りない答えが返ってきた。全額公費で派遣するわりには、視察目的や訪問先などはすべて議員任せということらしい。
毎年夏は国会議員の海外視察ラッシュだ。昨年は衆院の解散・総選挙や自民党総裁選が控えていたため少なめだった分、今年は多い。7月から9月の公式派遣議員数(予定含む)は衆院が92人、参院が58人の計150人にのぼる。費用のほうは今年度中に計144人を派遣する衆院が約3億2000万円、計90人の参院が約1億9000万円を当初予算で確保済み。どちらも随行職員の経費を含めた金額だが、議員1人当たりの平均額は200万円以上である。
要は、費用対効果だ。カネをかけただけの成果があればよし。なければ、高い税金を使った物見遊山でしかない。それを判断するのは国民である。ところが、参院では日程や報告書が議院運営委員会の議事録に記載されるからインターネットで誰でも見られるが、衆院は報告書を議長に提出するだけで議事録へ掲載していない。こんなことまで隠すようでは、「やっぱり観光旅行」と思われても仕方なかろう。
冒頭の与野党国対委員長による海外視察について、民主党の若手議員からさえ批判の声が聞かれる。だが、同党の国対委員長は「恒例の視察であり、今年だけ批判されることはない」と記者会見(3日)で言ってのけた。民主党が政権を取ったあかつきには、政官の既得権益にメスを入れてくれると期待していた国民は、さぞ鼻白んでいることだろう。
<2004年7~8月に日刊ゲンダイに連載した「亡国!税金のムダ遣い」より>
臨時国会が8月6日に閉会し、焦点だった年金制度改革関連法廃止法案は与党の反対であっさり廃案となった。「廃止が民意」と法案の徹底審議を求めた民主党は振り上げた拳の降ろしどころが見つからず、さぞ困っているだろうと思ったら、国会の舞台回しを指揮する現場責任者の国対委員長は、自民、公明両党の国対委員長らとともに22日から10日間の日程でイタリアとトルコへ海外視察に出かけるという。なんのことはない、表では会期幅をめぐってつばぜり合いを演じておきながら、裏では「お手々つないで」旅行を楽しむのだ。
しかも、この一行の視察目的は「憲法改正手続き及び政治経済実情調査」。両国で憲法改正の動きでもあるのかと衆院事務局に尋ねると、「訪問国は国対委員長同士の話し合いで決まった。こちらでは、イタリアは以前からEU(欧州連合)に入っていて、トルコは最近加盟したということぐらいしか知らない」(国際部総務課)との頼りない答えが返ってきた。全額公費で派遣するわりには、視察目的や訪問先などはすべて議員任せということらしい。
毎年夏は国会議員の海外視察ラッシュだ。昨年は衆院の解散・総選挙や自民党総裁選が控えていたため少なめだった分、今年は多い。7月から9月の公式派遣議員数(予定含む)は衆院が92人、参院が58人の計150人にのぼる。費用のほうは今年度中に計144人を派遣する衆院が約3億2000万円、計90人の参院が約1億9000万円を当初予算で確保済み。どちらも随行職員の経費を含めた金額だが、議員1人当たりの平均額は200万円以上である。
要は、費用対効果だ。カネをかけただけの成果があればよし。なければ、高い税金を使った物見遊山でしかない。それを判断するのは国民である。ところが、参院では日程や報告書が議院運営委員会の議事録に記載されるからインターネットで誰でも見られるが、衆院は報告書を議長に提出するだけで議事録へ掲載していない。こんなことまで隠すようでは、「やっぱり観光旅行」と思われても仕方なかろう。
冒頭の与野党国対委員長による海外視察について、民主党の若手議員からさえ批判の声が聞かれる。だが、同党の国対委員長は「恒例の視察であり、今年だけ批判されることはない」と記者会見(3日)で言ってのけた。民主党が政権を取ったあかつきには、政官の既得権益にメスを入れてくれると期待していた国民は、さぞ鼻白んでいることだろう。
<2004年7~8月に日刊ゲンダイに連載した「亡国!税金のムダ遣い」より>
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by kabashima_h
| 2004-10-14 22:19
| 民主主義のコスト