前号に引き続き、北海道ニセコ町の「町ふるさとづくり寄付条例」についてです。1年後の町村合併に向けた法定協議会に参加しながら、「町への想いをふるさとづくりに対する社会的投資」として寄付金を受け入れる条例をつくったニセコ町に割り切れないものを感じながら、とりあえず役場へ電話をしてみました。応対してくれた総務課の参事さんはじつに懇切丁寧に、かりに合併した場合の条例と寄付金の取り扱いについて(今後の合併協議会の中で決まることなので)予測を交えて教えてくれました。
それによると、来年10月1日に合併しても、旧町村は法人格を有する合併特例区になる(最長5年間)ことが法定協で決まっているので、寄付金は旧町の財産として独自に管理、利用できるとのこと。また、条例自体も「ニセコ町」の部分を新町の名称に変えるだけで、引き続き旧ニセコ町を対象に適用することは可能だろう、とのことでした。
なるほど、なるほど、そういうことならば、寄付するほうも安心なわけです。それならそうと、町のホームページできちんと説明してくれればいいのに、と思いつつ、あちらこちらをクリックしていると、「ニセコ町財政危機突破計画~合併しない場合の町の財政見通し~」という文書に出くわしました。
これはその名のとおり、ニセコ町が合併せずに自立の道を選んだ場合の財政上の将来見通しを詳細に記したものです。寄付条例が議会で可決・成立する前日の9月16日に策定されたことになっていて、その後、これを町内に全戸配布して地区ごとに説明会も開いている模様。さらにホームページには、合併反対論者として知られる田中康夫・長野県知事の「まちづくり講演会」(10月3日)のお知らせまで登場。もしやこれは……。
モヤモヤしていた雲の間から青空がちょっぴり見えたようです。ニセコ町は、というか、逢坂誠二町長は、法定協からの離脱、そして自立への道を模索しているのではないでしょうか。実際、法定協の構成メンバーである5町村のうち1町が住民アンケートの結果をもとに離脱を表明しました。これも寄付条例制定の前日のことです。いまは黙していますが、この「町財政危機突破計画」による説明会と田中知事の講演に続いて、住民アンケートのようなものを行い、年末までに自立宣言をする――というスケジュールを思い描いているのかも知れません。
私は、合併をした上で地域の自治機能を高める方策を探るべきという考えですが、自立も否定しません。ただ、自立の道を選ぶのであれば、財政的な裏付けは最低限必要です。この「町財政危機突破計画」によると、合併しなかった場合、毎年の収支は当面赤字続きですが、11年後の2015年には黒字に転換し、新たな事業の計画も可能になるそうです(もちろん、それまでは大変な節約を強いられます)。
でも、この財政見通しは、今後20年間、町人口が現在の4500人で推移することが前提です。ところが、国立社会保障・人口問題研究所(合計特殊出生率を予測しているところ)は、町人口が2020年に3700人、2030年に3200人へ減少すると推計しています。人口減は町税の減収にとどまらず、地域の活力を奪います。幸い、ニセコ町は観光産業の活性化のおかげで、人口の減少に歯止めがかかっているようです。それでも、地方交付税の減額幅が想定以上に大きくなるなど不測の事態が重なれば、この財政見通しは紙切れ同然になってしまいます。
少しでも多くの独自財源を貯えたいニセコ町にとって、寄付条例はある意味、渡りに船だったのでしょう。「自立するからカネをくれ」と言ってしまっては身も蓋もありません。これからのニセコ町にとって、寄付はまさにありがたい「社会的投資」です。「寄付はあくまでも政策メニューに対する納税者の投票であって、町への単なる寄付ではない」(跡田直澄・ホームタウン・ドナー・クラブ理事長)という制度発案者の趣旨とはやや違う利用法のような気がしますが、地方自治の再生という大きな目的の中に括られるのならOKということでしょうか。いずれにしても、もし本当に自立の道を進むのであれば、逢坂町長には町財政が黒字に転換するまでリーダーシップを取り続けてもらいたいものです。
「
チホウ政治じゃーなる」vol.295の「発行人より」から